精神的にも身体的にも健康であることは人間の理想です。
身体的健康は食事や運動で形成されていくものですが、心の健康は芸術や文化の力を借りてこそ発達できます。
「やさしい心」「いたわりの心」「小さなもの、弱いもの、壊れやすいものをいとおしむ心」そして、「美しいものにあこがれ、美しいものを愛し、美しいものを自らつくり出そうとする心」、それが芸術教育によって培われます。
「絵を描く」ということは「見る」ことなのです。ふだん何気なく日常的に見えているものは「映っている」のであって見えてはいません。絵を描くことによって、目と手の協応動作を通しながら見えてきます。
「見る」ことは「わかる」ことへ発展し、「見抜く」という高度な認識力を発達させるのです。
例えば、草木を描くことによって、自然の美しさ、けなげさに気付き、自然の法則にも認識が高まります。そして何よりも「この花は、なんてきれいな花だろう!」と感情の高まりを憶えます。
こうした日常的に出合う一つ一つの感動が鋭い豊かな感性を磨き上げていくのです。
感受性とは、外界から刺激を受けて感情に変換させる機能のことをいいます。
それは経験や知識を身につけ成長と共に養われていくのです。
感性とは、外界から刺激を自分の理性に取込み独自の表現方法で転換させる機能です。
感受性を「心の運動神経」と捉えるとしたら、絵を描くという活動によって感性を磨くということは、いわば「心のトレーニング」となり、心の成長発達に繋がっていくのです。
遊びのなかに「絵画」を取り入れることにより、子どもから大人まで、自然に情緒豊かな人間へと成長できればと願っています。